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90㎜マクロでタンポポの綿毛を撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
セイヨウタンポポ/キク科 


 これまで10年以上にわたってこのホームページを通じて野草の紹介をしてきましたが、あまり撮影方法についてはお伝えしてきませんでした。撮影した野草に対する思い入れや、撮影した時の状況などはコメントに書いてきたつもりですが、撮影のテクニックやレンズの選択や露出や絞り等、撮影の基本的なことにはあまり触れてきませんでした。ここにきて私の撮影方法を教えてほしいという声も聞こえてきましたので、当ホームページを通じて私の撮影ノウハウを紹介してみようと思い立ちました。写真にはこれが正しくてこれは間違いだというものはありません。撮影は自分の思ったように撮ればいいし、感じたままに撮ることが一番だというのが私の持論ですが、もし私の花の写真に興味や共感を抱いてくださる方がいらっしゃって、どんな風に撮影しているんだろうと思われているのなら、私なりの撮影スタイルを公開してもいいかなと思っています。
 もう一度言いますが、私の撮影方法は私のものであってこれが正しいというものではありません。参考にしていただければという程度のものですので、あまり期待されないでください。
 これから少し時間をかけてまとめていきたいと思っています。

 まず最初に「90㎜のマクロレンズでタンポポの綿毛を撮る」と題してお話してみたいと思います。

 花の撮影をされる方のほとんどはマクロレンズをお持ちでしょう。ではどんなマクロレンズをお持ちでしょうか。中には何種類も持っておられる方もいらっしゃると思いますが、一般的には24㎜前後の広角マクロレンズ、50㎜前後の標準マクロレンズ、90㎜や100㎜の中望遠マクロレンズ、180㎜や200㎜の望遠マクロレンズの4種類があります。それぞれ特徴があって違うのですが、私が好んで撮影しているのは50㎜と90㎜のマクロレンズです。残念ながら望遠のマクロレンズは持ち合わせておりません(近々購入するかもしれませんが)。
 写真をされる方はご存知でしょうが、レンズの焦点距離が長くなるほどボケ味が強くなります。同じ絞り値で撮影しても50㎜マクロと180㎜マクロでは随分違いがあります。50㎜のマクロレンズは図鑑的な記録写真に向いていて、180㎜の望遠マクロレンズは心象的な印象に残る作品作りに向いていると言われるのはボケの違いによるものです。つまりピントの合う範囲(被写界深度と言います)が50㎜マクロは深く180㎜マクロは浅いということです。90㎜マクロレンズは両者の中間的な位置づけになります。
 では野草の撮影をする時にどのレンズを使ったらいいのでしょうか?答えはどれでもいい、つまり好きなレンズを使えばいいということです。決まりはありません。そんなことを言うと参考にも何もならないじゃないかと言われそうですが、基本的なことは追々話すとして、自分がどのように撮りたいかを決めればいいだけです。咲いている様子を撮りたいのか、花のアップを撮りたいのか周囲の状況も写したいのか等々、その時々の状況や気分によって変えればいいだけのことです。ただ自分の思いがあっても思ったように撮れないのが写真の難しさでもあるわけです。イメージはあるんだけどなあという方も多いはずです。写真展や写真集などを見てあんな風に撮ってみたいという作品もあると思います。でも真似しようと思っても真似できないはがゆさやじれったさがあってどうもうまく撮れないと悩んでおられる方が多いのも事実です。好きなレンズを使うには好きなレンズの特性を知らなければならないし、今、目の前にしている花がどのように写るかイメージできなければそのレンズを使いこなすことはできません。ピントをどこに合わせたらいいのか、絞りはいくつにしたらいいのか、構図をどのように決めたらいいのか、どの角度から写したらいいのか、光をどのように捉えたらいいのか、シャッタースピードはどれくらいがいいのか、写真を撮るにはいろんなことを考えないといけないんですね。だから難しいのかもしれません。本当はもっと簡単なことかもしれませんが、いろいろと考えすぎて難しくしてしまっているのかもしれません。
 さて今回は90㎜マクロレンズを使ってセイヨウタンポポの綿毛を撮影しましたので、その時にどんなことに注意しながら撮影したかお話してみたいと思います。
 まずレンズの選択ですが、綿毛のクローズアップを中心に綿毛の繊細なディティールやセイヨウタンポポの表情を撮影するには50㎜より90㎜の方が相応しいと判断しました。180㎜を持っていればそれでもよかったかと思います。つまり背景をよりぼかして綿毛を浮き上がらせることのできるレンズが90㎜や180㎜なのです。ではそれらのレンズを使えば綺麗なボケとなるかというと必ずしもそうではありません。絞り値や被写体との距離によって大きく変わります。絞り開放値で撮影すればより浅い被写界深度となり最大のボケが生まれますが、ピントの合う範囲が狭いのでボケ過ぎてしまってなんだかよくわからない写真になってしまいます。適度にボケて綿毛の表情が的確にわかるすっきりとした写真にするには的確な絞りと撮影距離が必要となります。



撮影地 高浜市 2015/01/26撮影 NikonD810 TamronSP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200
この写真のポイントは一つだけ飛び出している綿毛の表情です。
ピント合わせはマニュアルで行っています。オートフォーカスでもいいのですが
微妙なピントはマニュアルの方が的確でいいように思っています。
背景の緑は周辺の草叢です。
絞りはf5.6ですが、これくらいの距離の撮影ではf5.6が一般的ではないかと思います。
飛び出した綿毛にピントを合わせることが大切です。


撮影地 高浜市 2015/01/26撮影 NikonD810 TamronSP90㎜マクロF2.8 f11 絞り優先モード マニュアル ISO200
上の写真と比べるとかなり接近して撮影しています。
ピントは手前の頭頂部に合わせていますが、同時に綿毛にもピントが来てほしいところです。
ところがこの場面では頭頂にピントを合わせると綿毛にもピントが来るものがありませんでした。
綿毛にもある程度ピントが来ないとぼやっとした写真になってしまうので、この場合はf11まで絞ってみました。




撮影地 高浜市 2015/01/26撮影 NikonD810 TamronSP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200
こちらは柔らかい光を意識して撮影した1枚です。
雰囲気を出すには少し引いて撮影した方がいいでしょう。
撮影する時に意識したことは綿毛と茎に被っている葉の両方にピントが来るよう意識しました。
葉にピントが無いと締まらない写真になったと思います。



撮影地 高浜市 2015/01/26撮影 NikonD810 TamronSP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200
2枚目の写真と同じくらい接近していますが、この時はf5.6で撮影しています。
接写の場合はどこにピントを合わせるかで印象が随分変わってしまいます。
すっきしりとした感じにするにはどこにピントを合わせたらいいか、いろいろと試してみるといいでしょう。
そして自分が何を撮りたいのか明確にする必要があります。
写真は心に映ったものをどう表現するかということだと思いますので、
まず感じたままに撮ってみることをお勧めします。
その上で自分の思いがうまく表現できていなかったら、
角度を変えてみたり、もう一度遠くから眺めてみるといいかもしれません。




撮影地 高浜市 2015/01/26撮影 NikonD810 TamronSP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200
1枚目と同じように一つだけ飛び出した綿毛がポイントとなります。
1枚目はそれを強調した写真ですが、こちらは少し引いてタンポポの様子がもう少しわかる写真となっています。
1枚目と同じように撮る方法もあるし、こんな風に全体を見せることで、その場の状況が読み取れる写真になります。
どちらがいいかは好みの問題で、要は何をどう見せたいか、自分なりの答えを持つことではないかと思っています。




撮影地 高浜市 2015/01/26撮影 NikonD810 TamronSP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200
最後はたまたま小さな蜘蛛がいることに気づいて撮影してみたものです。
ちょろちょろ動き回っていて撮影しにくかったのですが、背景に浮かぶ位置に来た時にシャッターを切りました。
実際には何枚も撮影していますがこれが一番蜘蛛の様子がわかるカットでした。
昆虫写真については素人ですのでテクニックも何もありませんが、
撮影しているとこんな風に昆虫の存在に気づいて撮ることも珍しくありません。
ページではあまり公開したことはないのですがそれなりに撮影しています。


今回は撮影についての初めてのページですのでこんなことしか書けませんでしたが、
次回はレンズの違いやアングルの違いなど比較画像を取り入れた解説にしてみたいと思っています。

深谷


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