戻る

雨を楽しみながら撮影する 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
親海湿原・姫川源流周辺 

 花の撮影の場合、やっぱり天気がいい方がいいですよね。私も同じです。でもいつもいい天気になるとは限らないし、時には雨の降ることもあるし、風の強い日だってあります。天気を見て出かけるのなら自分の都合で出かけたり中止したりすることも可能ですが、あらかじめ予定していて、宿も取ってある場合などは雨でも出かけることになります。天気はその日になってみないとわからない訳なので仕方ありませんね。
 でも本当に花の撮影は天気がいい方がいいのでしょうか?撮影がしやすいという点では確かに晴れている方がいいですが、日差しが強くて写真にならないことだってあります。花の撮影には理想の天気というのがあって、一般的には高曇りの天気がいいと言われています。その理由は柔らかい光が全体に回って、花の色も自然な感じになるからなんですね。ピーカンでは影も濃くなりコントラストの強い写真となって、白い花や黄色い花などは反射してしまって白飛びの写真になってしまいます。だから高曇りの天気や晴れて欲しいが雲も出てほしいという難しい注文になってしまいます。実際に理想通りの天気なんて、そんなに多くないのが現実ですしそれが自然の姿なんですね。
 花の撮影の天気で一番嫌われるのが雨の日、これは誰もが認めるところではないでしょうか。私も最初はそう思っていました。まず雨が降っているとカメラが濡れてしまうし、花もうなだれてしまって綺麗じゃない。何よりも傘を差したり、カッパを着ることがめんどくさい。その通りなんですね。恐らく100人いれば99人は雨はいやだと思うことでしょう。私もその一人ですからご安心を。と言いながらも実際に雨の日に撮影をしてみると、これが面白いんですね。何が面白いかって、雨が面白いんです。花や葉が濡れることによって晴れた日では見られない光景が見られます。当たり前のことですが雨を嫌うのは、濡れることだったり撮影しにくいことだったりで、実際に観察した結果の感想ではないことが多いような気がします。実際に観察してみると雨というディティールの面白さに気づいてもらえるような気がします。
 私が時々花の観察会をやるとほとんどの日は晴れてしまいます。どういう訳かそういう巡り合わせになります。結果的に参加していただいた皆さんに喜んでもらえることになるのですが、実は雨の日も密かに期待してるんですね。いつも生憎の天気は無いよと言っているのは、晴れた日には晴れた情景があり、曇りの日には曇りの情景があり、雨の日には雨の情景があって、どんな天気でもその日にしか見られない情景が展開されているんですね。それを素直な目で見てみると、いろんなものが見えてくるよと伝えています。
 今回定期的に観察を続けている白馬村の親海湿原や姫川源流では雨の中での撮影となりました。花は端境期のような感じでこれと言って特に目立つ花もなかったのですが、いざ雨の中で撮影を始めてみると、面白くて普段より長時間撮影に没頭していました。雨に濡れる草花や枯れ行く姿など、晴れた日では見られない情景が面白かったんですね。
 そんな訳で雨の日の撮影も悪くないことをお伝えしたくてこのページを作成しました。いや悪くないというより晴れの日より面白いと言った方が正直なところかもしれません。
 一つお断りしてくと、今回の撮影カメラはCanon EOS5DⅡ、 レンズは70-200㎜F4の1本だけです。実はNIKONのカメラを忘れてきてしまったんですね。カメラもレンズも入念に掃除をし万全の準備をしていたのですが、レンズだけ持ってきてカメラを置いてきてしまったようです。馬鹿ですね。以前山登りをするのに登山靴がなかったこともある私ですから。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
ツリフネソウ

このツリフネソウも雨が降っていなければあまり面白くないかもしれません。
水滴や左上にある雨が落ちる線が状況を物語ってくれて、この写真の大事な要素となっています。

雨の.降る中どのように撮影しているかと言いますと、右手に大きめの傘を持っています。
その傘を持ちながら両手でカメラを抱えて撮影しています。
つまり手持ち撮影です。
三脚を使うのが基本ですが、最近のカメラは感度を上げても画像の劣化がほとんど見られないので
シャッタースピードが1/60秒以上あることを確認して撮影すればほとんどブレずに撮影できます。




撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
ツリフネソウ

このツリフネソウも晴れや曇りの状況ではあまりぱっとしない写真になったことでしょう。
花付きが決していい訳でもないし、花の状態もベストではありません。
それでも雨にぬれて、しっとりとした感じと花の色が深い色になっていることによって
情緒のある写真になったように思います。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
ドクゼリ

先月初めに訪れた時は花盛りだったドクゼリも、8月末になればこんな姿になります。
雨が降っていなければ少しインパクトに欠ける場面ですが、
降りしきる雨の中に佇む枯れ始めたドクゼリの表情に惹かれました。
華やかさや美しさとは違った味わいある場面です。
雨が落ちる様子を写しとめるには、背景に暗いところを持ってくると写ります。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
ドクゼリ


上の写真を角度を変えて撮影しています。
茶色くなり始めた実の様子と水滴がポイントになっています。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
オオバセンキュウ

ドクゼリに変わって元気な花を咲かせていたのがオオバセンキュウ。
高さは2mを超えるものも珍しくありません。
この写真も濡れる姿と背景の雨の線ですね。
蜘蛛の巣のいいのがかかっているとさらに面白くなったかもしれませんが、
蜘蛛の巣は雨の日より朝露に濡れる方が綺麗に水玉ができます。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
オオバセンキュウ

これは上の写真を少し引いた位置から撮影したものです。
もっと引いて下から上まで写るようにも撮影しましたが、雨の様子がぼやけた感じになったので
ここでは取り上げません。
やはり雨が降っている状況がよくわかる方がいいですね。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
ドクゼリ

再びドクゼリの写真です。旬の花が少ない中、目に入ってくる被写体はやはり大柄なものが多くなります。
その点、ドクゼリは格好の被写体ですね。
背景の抜ける場所といい被写体を探しながら移動しています。
この場合、上から目線ではなく下から目線で見るといい場面が浮かび上がってきます。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
サワギキョウ他

こんな場面も普段なら目に留まらないかもしれません。
サワギキョウもドクゼリも終盤で、ぱっとしないしごちゃごちゃしてます。
それでもなんかいい感じに見えたのは雨のおかげなんですね。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
チカラシバ

秋にはよく撮影しているチカラシバです。
雨に濡れて水滴が付いています。
ピントもズレていて全くダメな写真ですが、こんな情景も雨ならではということでの紹介です。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400

木の実はケナシヤブデマリかなと思いますが、自信なしです。
ヒロハゴマギの方が正解かもしれません
雨に濡れたことによって実が鮮やかですね。
この時は雨が上がり空が明るくなってきた時の撮影です。
葉が輝いているのはそのためです。
写真にはそんな光の感じが写し込まれます。
朝には朝の光が、夕方には夕方の光が、曇りには曇りの、雨には雨の光があって
一瞬一瞬変化しています。
そんな光の特徴を画面から感じられる写真が撮れたらいいなと思います。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400

小雨になりました。
雨が降っている様子を見せるのは難しい状況です。
それでも雨に濡れて艶々と輝いてる情景を見ると清々しさを覚えます。
背景の縦に伸びる林の様子が画面を引き締めてくれたように思います。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
サワギキョウ

終盤のサワギキョウが湿原に群生していました。
晴れた日ではきっと絵にならなかったと思います。
同じように切り取っても晴れているとこの質感が出ません。
湿度100%だからこそ写せる場面ではないでしょうか。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
クサレダマ

もっと水滴のついているものはないかと探してみましたが、いいものがありませんでした。
花が終わっても、こんな風に実も楽しませてくれる野草は少なくありません。
花もいいけど実もいいですね。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
イノコズチ

あまり撮影することもないイノコズチですが、このしっとり感によって撮影させられました。
撮影させられたというとイノコズチに申し訳ないので、撮影したくなったとしておきましょう。
実際にそうなんですから。
雨の日には見えるものが違ってくるんですね。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
そば畑

9月の収穫を前にそばの花が花盛りでした。
晴れ渡った青空の下に咲く真っ白なそばの花も爽快な風景ですが、
雨に煙る中に咲くそばの花もなかなか乙なものです。



撮影地 白馬村 2015/08/29撮影 CANON EOS5DⅡ CANON 70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
キツリフネ

雨上がりのキツリフネです。
最初は本格的に降っていた雨も撮影を終えて車に戻る頃には上がっていました。
それでも空はどんより雲です。
雨上がりに少し濡れているキツリフネですが、こんな場面はよく見かけます。
これはこれでいいのですが、雨に題材を求めるなら、もう少し降っているとまた違った情景になったことでしょう。

雨の日は決して生憎の天気ではないことを少しでもわかっていただけましたでしょうか。
大雨や強風でなければ、どんな天気でもウェルカムとしたいですね。

深谷

inserted by FC2 system