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白馬村で早朝のフランスギクを撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
フランスギク/キク科 

 撮影シリーズではどんな内容を取り上げようかと迷うこともありますが、基本的には計画はないので行き当たりばったりの内容となります。その時々に撮影しながら感じたことを綴っていけたらと思っていますので、期待せずにお付き合いいただければと思います。
 今回は白馬村の道の駅に車中泊をした翌朝、朝もやが出ていていい感じだったので散歩がてらに撮影したものになります。題材はフランスギク。ヨーロッパ原産の帰化植物で栽培もされていましたが、今では野生化していてあちこちで見られます。個人的には好んで撮影する花ではないのですが、状況によっては撮影してみたくなる場合もあります。今回は白馬村の朝の状況と見事にマッチしていて、意識的にフランスギクを狙って撮影してきました。
 いろんな場面が目に留まり、その度にその場の雰囲気や状況を考えながら撮影しました。レンズの選択や切り取り方など思い描いたことをそのまま綴ってみたいと思います。
 今回使用したカメラはNikonD810、レンズはNIKKOR16-35㎜F4とTAMRON SP90㎜F2.8の2本です。毎回お話していますが、これは私の撮影スタイルですので、これが正しいというものではないことをご了承ください。



撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f2.8 絞り優先モード オート ISO400 露出補正+0.8

朝もやの中に咲く道端のフランスギクです。
後には田植えの終わった田んぼがありさらにその向こうに何か木が生えています。
朝もやの中で霞んでいますね。
撮影するにあたって、この要素の全てを取り込もうと思いました。
フランスギクを手前に配置して田んぼの様子とその向こうにある木もわかるように撮影しました。
ポイントは当然ですがフランスギク、少し右寄りに配置をして
右下から左中央にかけて生えている緑のヨモギ等の草の流れの中でバランスを取っています。
そしてその流れの向こうに霞む木が見える位置に構図を決めています。
当然ながら田んぼの様子もわかるアングルにしています。
背後の田んぼだけでなく奥に木があることによって遠近感が生まれ、より臨場感が出たのではと思います。
それから絞りは朝もやの柔らかい雰囲気を出すために開放のf2.8で撮影してみました。
こんな場面も朝もやがあればこその風景だと思います。




撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO400 焦点距離16㎜ 露出補正+0.3

次は一転して広角で撮影したメリハリのある写真です。
綺麗に咲くフランスギク、そして緑鮮やかな田んぼとその向こうの木、
そして何よりもいいのが地面にたなびく朝霧と青空。
こういう場面は探して見つかるものではなく、偶然の出会い。
その出会いに感謝を込めながら瞬時に構図を決めていきます。
実際には感謝とか何もなく、今目の前の景色にフォーカスしているだけなんですね。
後になってありがとうという感謝の気持ちが生まれてきます。
さてこの写真のポイントはまずフランスギク。
綺麗に群生しているので手前に主役として持ってきます。
さて問題なのは青空をどの程度入れるかです。少ししか入れなければ青空の印象が薄れるし、
多く入れすぎるとフランスギクの印象が薄れます。
私はこの時どちらも見せたいと思いました。
その結果上のような比率となりました。
半分に区切ると中途半端な印象になるので、私の感覚ではこんな感じでしょうか。
くっきりとした写真にするために絞りはf11で撮影しています。
もちろんピントはフランスギクです。
広角撮影の基本は手前にメリハリのあるものを持てくることです。
自分が思っているよりもう一歩前に出て撮影するのがちょうどいいかもしれません。



撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO400 焦点距離16㎜ 露出補正+0.3

これは同じ場面を縦で撮影したものになります。
同じような意図にも関わらず空との比率は逆転しています。
それでもフランスギクの印象は縦の方が強くなります。
面白いですね。




撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO400 焦点距離16㎜ 露出補正0

次は朝日を意識した写真です。
まずは主役であるフランスギクが綺麗であることが前提になります。
手前にどのように持ってくるかは咲いている花の状態にもよるので何とも言えませんが、
光を受けている場面であることが条件になります。
次に太陽をどの位置に持ってくるかということですが、一般的に真ん中はありえませんので、
右か左のどちらかに持ってくると斜めに差し込む光が自然に感じられます。
この写真の場合は右下から左上に流れる草の動きと、右上から左下に差し込む光が交差して
動きのある場面になっているのではないでしょうか。
花の位置も太陽の位置を計算して配置してあります。
背景の山の黒さと太陽の明るい光が程よいコントラストになっています。
その左にたなびく朝霧が陽が昇ると共に消えていく様子も感じられるかもしれません。
こんな風に写真は画面の中のもの全てがなんらかの役目を果たしています。
主役を生かすためにもいろんな脇役が入ってくるといいと思います。
但しあくまでも主役を生かす範囲でということですが。
その辺が難しいかもしれませんね。



撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400 焦点距離35㎜ 露出補正+0.3

次は同じように太陽を意識した写真でも、実際に画面の中には太陽は入っていません。
太陽の存在が感じられるようにぎりぎりのところでカットしてあります。
そうなると主役のフランスギクが朝日に照らされて輝く様子がポイントとなってきます。
こんな場面では規則正しく並んでいるよりも、ある程度不規則に咲いていた方が躍動感が出てきます。
本当を言えばもっと踊っていた方がいいのですが、この場面ではこんなところでしょう。
面白いのは規則正しく植えられた水田の様子がフランスギクと対比を成していることでしょうか。
また水面に光を浴びて放射状に伸びている稲の影が太陽の存在をはっきりさせています。
雲も引き立て役になっているように思います。
理屈をつけるといろいろとコメントできますが、こんなことを考えながら撮影しているわけではありません。
瞬間瞬間のフィーリングで狙いを定めて素早くシャッターを切っていきます。
後から振り返るとこんなことかなあということです。



撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO400 露出補正0

次はフランスギクの花をもう少し大きく取り入れた写真です。
自然にフランスギクの花に目線が向けられると思います。
朝日に輝くフランスギクの清々しい様子が感じられるのではないでしょうか。
上の写真のように太陽の方向に目線が向けられることはありません。
あくまでも花に注目してもらえる写真だと思います。
この場合どの程度花を取り入れるといいのか難しいところですが、
下に失敗した写真を載せますので見比べてください。
花をもう少し大きく取り入れていますが下が途切れているため窮屈な感じがします。
花だけを見るならこれでも構いませんが、植物としてそこに生きている姿を見せるには
上の写真の方が自然な感じがします。



上の写真と比較をしてみてください。



撮影地 白馬村 2015/06/20撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f2.8 絞り優先モード オート ISO400 露出補正+0.7

最後は割とオーソドックスに正面から捉えた写真です。
花の写真は素直に正面から撮ることを基本にすることが一番だと思っています。
それは見た時の印象に近いからです。
咲いている花を見てわあ綺麗だと思った時、どこから見て綺麗だと思ったのでしょう。
その最初に見て綺麗だと思ったところを素直に切り取ってみると、
落ち着いて見られるいい写真であることが多いのです。

花の写真は人それぞれの思いがあって見え方も人それぞれであるはずです。
どの写真がいいとか悪いとか一概には言えません。
正解がないと私が言っているのはそういうことです。
ただ好き嫌いは誰でもあるでしょう。
だから自分の好きなように撮ってあげたらいいんですね。

一つだけ伝えたいことは、写真を撮る前に花が好きであること。
花が愛おしく感じられると花からいろんなことを教えられるし、
素敵な場面を用意してくれるということでしょうか。

またぺらぺらと独り言をしゃべってしまいました。

撮影シリーズに関して何かコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷


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