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苦手なヒナギキョウを撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ヒナギキョウ/キキョウ科 

  花は可愛くて綺麗だなと思っても見た目の印象や美しさをうまく撮影できない野草があります。その中でもヒナギキョウは私にとって一番難敵な野草となっています。自宅の庭にも生えているし、道端や河川敷などごく普通に見られる帰化植物ですが、咲いていてもカメラを向けようと思わなくなりました。以前は見かければ必ず撮影を試みていましたが、最近は諦めムードが強く、うまく撮影できないという思いが先に立ちカメラを向けることがここ数年無かったように思います。
 それが一転して撮ってみようムードに切り替わりました。それは矢作川でカワラナデシコの群生やコマツナギの花を撮影していた時、ふとヒナギキョウにも目が向き、なんとなく今日は撮れるような気がしたからなんですね。花は周辺のあちこちに見られので探さなくても咲いています。
 問題は複数の花が画面の中に収められる場面が見つかるかどうかと背景を抜ける場所に咲いているかどうか、この2点でした。そうこの複数の花を画面に入れることと背景を抜くことがヒナギキョウを撮影する上で一番のポイントになります。そんな観点から撮影を試みましたのでお付き合いください。





撮影地 矢作川 2019/07/13撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6
野草の撮影で花の表情を写せないときは
咲いている雰囲気や佇まいを写し留めることを心がけています。
ヒナギキョウのように花茎は細く長く花が小さい野草は
上向きに咲く花の上から表情を写そうとすると
花だけが浮かび上がってしまって、とりあえず花を撮ってみましたという
単なる花のクローズアップ写真になってしまいます。
野草写真の基本は花の目線で撮影することなので
横から花茎も花もピントが合うように撮ってあげると
生き生きとした表情とその場の雰囲気も同時に表現できます。





撮影地 矢作川 2019/07/13撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6
これも同じような場面です。
2輪の花にピントがくるように慎重にポジションを決めて撮影します。
妥協すると後で必ず後悔します。
もっと花を大きく写したいところですが全体のバランス等を考えると
そこが難しいところです。
ヒナギキョウの撮影をしても満足できないのはこんなところにあります。
あとはいいロケーションを見つけることなんでしょうが
道端や草むらではなかなか思うようにいかないのです。




撮影地 高浜市 2019/07/14撮影 Canon5DⅡ SIGMA 70㎜マクロ F2.8 f5.6
これが花をクローズアップしてもあまり面白くない写真。
小さな花なのでまずは接写をしてみたくなるものなんですが
接写しても個性的な魅力を感じる構造でもないので
結局とりあえず写しましたという写真になりがちです。




撮影地 高浜市 2019/07/14撮影 Canon5DⅡ SIGMA 70㎜マクロ F2.8 f5.6
ではこれはどうでしょう?
私にとっては奇跡的な場面です。
ヒナギキョウの花が画面の中にこれだけ収まる状況というのは
まずありえません。
ここは草むらのために上に伸びようとしたヒナギキョウが
たまたま空いている方向に集まったということのようです。

本来のヒナギキョウの咲き方とは少し違いますが
これも自然の中で起きたヒナギキョウの対応なんですね。
いやはやいい場面に出会えたと嬉しくなりました。





撮影地 矢作川 2019/07/13撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6
これは雰囲気重視の撮影です。
花の終わったものもあって混沌とした状況ですが
ありのままの様子を切り取ってみるのも面白いものです。
こんな場合は必ず綺麗な花にピントがくるように意識することです。
写真はピントの合っている箇所にまず視線が向けられますから。


今回はうまく撮影できない花を対象に
あまりうまくない写真を紹介しました。
でも苦手な野草と向き合うこんな試みも写真を志す上には大切なことかもしれません。
自ら課題を課して宿題に取り組んでみるのもいいかもしれません。

深谷

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