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ヒロハアマナを撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ヒロハアマナ/ユリ科 

 春の花が咲きだし、撮影が忙しくなってきました。あれも見たいこれも見たいと気が逸りますが、体は一つしかありませんので、出かけた先で出会った花に心を込めて対峙しながら撮影していきたいと思っています。
 今回はヒロハアマナ。一般的なアマナより葉の幅が広く、葉の中央に白いラインが入っているのが特徴です。日が当たらないと花が開かないので撮影は当然太陽が高くなってきた昼間になります。ピーカンの晴天になると白い花は白飛びして花の質感が失われてしまいますが、春の陽ざしは柔らかいし、まだまだ斜めからの光線なので真夏のようななんともならない条件とは違いがあります。
 そんな中でヒロハアマナをどのように撮影してきたかお話してみたいと思います。もちろん私の感覚でその時々に思ったり考えたことを綴ってみるものなので参考程度にしていただければと思います。
 今回も自分の気に入った写真だけでなく、こんな撮り方をしてみたがあまりよくなかった写真も合わせて紹介したいと思います。


撮影地 新城市 2017/03/23撮影 NikonD810 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f13 絞り優先モード ISO200 露出補正+0.3

実際に花を前にした時、さてどの花をどのように撮ろうか迷いますよね。
迷わなくてもカメラやレンズの選択があるかもしれません。
コンデジで撮る場合なら選択肢はないので、とりあえず撮りはじめることになりますが、
交換レンズを持っていれば、どのように撮ってみようか考えますね。
そんな考えもなく最初からこれで撮るんだと迷いのない人は、
撮り慣れていて自分のスタイルができている人と言えます。

で、ここで私が何を言いたいのかと言いますと、
最初に何を撮るかということなんですね。
綺麗な花のアップを撮るのか、群生している一部を切り取りたいのか、
あるいはその全体の様子を撮りたいのか、
選択肢はいろいろとあると思います。
でも最初に花を前にした時の印象や目に留まった光景を
まず撮ってみることだと思っています。
もっといい場面があるかもしれないと、一通り探してから写すのではなく
感じたその時にまず撮ってみる。
そうするといい写真が撮れることが多いんですね。
これは経験上から間違いないと思っています。
鉄は熱いうちに打てではありませんが、感動が新鮮な内に撮影すること。
ときめいたその気持ちが冷めやらぬ前に撮ること。
逆に言えばトキメキがなければ記録写真にしかならないということでしょうか。
このシリーズで何度も書いていることですが
感動は写真に写し込まれるということなんですね。
その感動は見る人にも伝わります。
それがいい写真だというのが私の持論です。
多少ピントがずれていても、構図が決まっていなくても
自分の思いが伝わる写真になります。
ここが一番大切なところだと思っています。

説明が長いですね。
で、この日このヒロハアマナを見た時、私が最初に感じたのは
群生しているし斜面に咲く景観がいいと思いました。
そして最初に撮影したのが上の写真です。
私の目に映ったその場の印象をそのまま切り取った写真です。
これがいい写真かどうかは別にして
自分の印象を素直に写せた写真だと思っています。

では次にその後に撮影した写真を見てみましょう。



撮影地 新城市 2017/03/23撮影 NikonD810 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f13 絞り優先モード ISO200 露出補正+0.3

撮影データは最初のものと全く同じです。
違いは少しアングルを変えて右奥にある山を入れて遠近感と
もう少し状況のわかる写真にしてみたかったんですね。
最初の写真の時には後の山には意識がなく
ヒロハアマナの咲く様子に意識がフォーカスしています。
最初の写真を撮り終えて、全体を見渡した時に見えてきた場面とも言えます。
最初の写真と比較した時に
1枚目はヒロハアマナの花の咲きっぷりと斜面に垂れ下がるように咲く様子に感動した写真と言えますが、
2枚目の写真は山を入れたことにより
花だけでなく咲いている状況をより見せようとした意図的な写真とも言えます。
思考が働いていますがまだ感動冷めやらぬ時に撮影した写真ですので
これはこれでいいのかなと思いますが
純粋さは最初の方が勝っているように思います。

問題は一通り撮影した後にもっともっといい写真が撮れないかなと思って
あれこれ考えだした時なんですね。
そんな自分に気づいた時は撮影をやめて、咲いている花を眺めて幸せになってください。




撮影地 新城市 2017/03/23撮影 NikonD810 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f13 絞り優先モード ISO200 露出補正+0.3

次はもっと違った写真を撮ってみようと意図的に撮影した写真です。
今度は咲き乱れる様子を正面から撮影して
その雰囲気が出せないかなと試みました。
まあこれも悪くないなと思って撮りましたが、
撮った後に中央左にある3輪の花にもスポットを当てたいと思って
少し左から構えて撮ったのが下の写真です。



撮影地 新城市 2017/03/23撮影 NikonD810 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f13 絞り優先モード ISO200 露出補正+0.3

左の3輪の花が加わったことにより
良く咲いている印象が強くなりました。
花だけに視線を向けて見た時にはこちらの方が
印象的でいいように見えますが、
構図というか落ち着きは最初の方が安心して見られます。
2枚目の写真を見て少し落ち着かないのは左の空間が広いことからきています。
花の咲いている向きは印象的には右に向けられています。
右に向けられた方の空間が狭く、逆に左の方が広いことが
落ち着かない印象につながっているのではないでしょうか。
これも私の感覚ですので、違う印象を持たれる方もいらっしゃるかと思います。
実はこの写真を撮る時にこの感覚は最初からありました。
左の空間を減らすべくもう少し右寄りに撮影すればいいじゃないかとも
思ったのですが、
そうすると右上の白抜けの空間が中央寄りになってしまい、
かえってそれが邪魔になる感覚があって敢えてこの構図で撮ってみたという訳です。

さて次は別の場所で撮影したヒロハアマナの蕾の写真です。
これはレンズの違いによって背景が変わるので
どれが好きかという視線で見て頂けたらと思います。



撮影地 豊橋市 2017/03/23撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 露出補正-0.7

90㎜マクロレンズです



撮影地 豊橋市 2017/03/23撮影 NikonD810 SIGMA 50㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 露出補正-0.7

50㎜マクロレンズです。



撮影地 豊橋市 2016/03/23撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード ISO400 露出補正0

望遠ズームで焦点距離200㎜での撮影です。

個人的な感想では50㎜マクロが好きで、次は90㎜マクロ。
200㎜での撮影はこの場面ではよくないですね。
レンズの違いによってどんな風に写るか把握しておいて
被写体を見た瞬間に、どのレンズで撮影するといいか自分なりの判断ができるようになると
撮影の幅が広がるかもしれません。



撮影地 新城市 2016/03/23撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード ISO200 露出補正0

そして最後は花の接写です。
撮影は望遠ズームで焦点距離200㎜での撮影です。
本来ならマクロレンズで接写することが多いのですが
この日は午後の陽ざしで白飛び気味の写真になるので
敢えてマクロはやめて望遠だけにしました。
マクロレンズでは花の質感や繊細な表情が出せるので好きなのですが
こんな時は雰囲気重視の写真の方がいいような気がしました。

一つの花を撮影する時
広角、マクロ、望遠とそれぞれのレンズの特性を生かした撮影ができるようになれば、
花を観察することの楽しみに加え、撮影することの楽しみも増えます。
その結果、いい写真が撮れれば嬉しいし
撮れなくても別に残念な思いをすることもありません。
その時その時の一瞬一瞬を楽しむことが全てです。



撮影シリーズに関して何かコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷


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