戻る

カメラアングルによる背景の違い 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ホソバノアマナ/ユリ科 

 同じ被写体を同じカメラで撮影してもカメラアングルを変えることによって、背景が大きく変わり、写真の印象も大きく変わります。私が花の撮影をするとき、一番大切にしていることは主役の花をどう浮かび上がらせるかということですが、咲いている花を見つけた時、ここはこんな風に撮るといい感じになると、無意識のうちに判断をしています。見てからあれこれ考えてもあまりいい写真にならないのは、自分のイメージが沸いていないからなんですね。
 今回紹介するホソバノアマナはあちこちに咲いていて選んだ花ではなく、たまたまぽつんと咲いるのを見つけて、とてもいい場面だと思って撮影したものです。その瞬間、この場面で撮影するカメラとレンズは決まって、あとは構図や背景などをどうするかファインダーを覗きながら決めていきます。
 そんな風にして撮影した2枚ですが、背景の違いによって印象も変わってくるのではないでしょうか。どちらがいいということではなく、少しカメラアングルを変えるだけで違う写真になることをわきまえて撮影すると、面白いかもしれません。


撮影地 長野県 2017/05/23撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 焦点距離 187mm 絞り優先モード オート ISO200 露出補正0

ホソバノアマナは白い花なので
バックは黒い方が花が浮き立ちます。
当たり前のことですが、理想通りに背景を選べないことも多いのが
野草の写真です。
植物ですからいろんな草と一緒に生えているわけだし、
背後には森や林があることが多いですね。
草原のように大きな木もなく青空が広がっていれば、また違った写真になりますが、
この場面では樹林の中でしたので、背景を多く入れると
バックがごちゃごちゃして花が浮き上がってきません。
そこで選んだのは渓流の淵に日の当たらない影があること。
その中に花を入れれば白い花がくっきりと写ります。
そしてレンズは背景をぼかすことのできる望遠系がいいという選択です。
この時、ただ単に花が浮き上がればいいのではなく、
咲いている場所の情景が見えてくるように写してあげたいところです。
草むらであったり水の流れであったり、
いわゆるホソバノアマナの生える生活圏をそれとなくわかるようにしてあげるということです。
ここが植物写真の面白さであり難しさでもあると思っています。
あとは花も含めてどのようなバランスで配置するか。
ここも重要なポイントですね。
ひょっとしたら花の配置やバランスや構図がもっとも難しいところかもしれません。




撮影地 長野県 2017/05/23撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 焦点距離 187mm 絞り優先モード オート ISO200 露出補正-2/3

同じ被写体を同じ距離から同じ焦点距離で撮影していますが、
背景を黒くしないであえて水の中に花を入れてあります。
カメラアングルを少し上から撮影しただけです。
白い水の中に白い花では全く目立たないはずですが、
これは花の様子もよくわかります。
理由は光の当たり方にあります。
花には光が比較的強く当たっていて、水にはあまり当たっていません。
これが水にも強い光が当たっていると水の反射によって
花も目立たなくなってしまったはずです。
そのような状況の中ではこんな撮り方をしてみようとは思わなかったでしょうね。
まあその時の状況の中で見えてくるものを撮影すればいいのですが、
1枚目と比べると印象の違う写真になりました。

1枚目と2枚目の撮影目的の違いは
1枚目が花の表情を生き生きと見せたかったことで、
2枚目は渓流沿いに咲いていることを見せたかったということになります。

今回は2枚だけの写真の比較になりますが、
アングルをもっといろいろ変えてみたり、レンズを変えることによって
描写も随分変わります。
一つの被写体を前にしたとき、
いろんな撮影の可能性のあることをしって写してみると
今までとは違った写真が撮れるかもしれません。
そしてそんな試行錯誤の中から
自分の撮影スタイルというものが出来上がってくるような気がします。

植物写真の撮影はあまりあれこれ考えずに
見た瞬間の感動をそのまま素直に写すのが一番いいというのが
私の持論ですが、
いろんな可能性を試してみることは写すことの楽しみにも繋がってきます。
好きな花と触れ合えるのが植物写真。
これからもいろんな出会いを楽しみながら撮影も大いに楽しみましょう!



撮影シリーズに関して何かコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷


inserted by FC2 system