イワザクラを撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
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イワザクラ/サクラソウ科
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まず最初は花の美しさにフォーカスした写真から。
人が美しさを感じるのは花の形、色、咲き方、環境など様々な情報を 見た瞬間に認識して感情が湧くわけですが ほとんどの場合は花そのものに対する反応なのでしょう。 だからまずは花のアップを中心とした写真を撮りたくなります。 できるだけ綺麗で多くの花をつけていて バランスよく配置されているところを狙います。 その時どんなカメラでどんなレンズで撮影するかによって 描写が大きく変わります。 私の場合はフルサイズの一眼レフカメラを使っているので カメラの特性やレンズの特性を生かしながらの撮影となりますが APS-Cのカメラであったりコンパクトカメラやスマホであっても 自分がどんな風に撮りたいかを明確にしていれば 意図した写真は撮れるようになります。 ただここでは私の使用しているカメラとレンズを使っての説明ですので ご了承ください。 その中で何か参考になることがあれば嬉しいのですが。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200 焦点距離200㎜
私が花のアップ気味の撮影をする時 使うレンズはマクロの時もあれば広角の時もあるし望遠の時もあります。 その時の状況に応じてレンズを使い分けしますが イワザクラくらいの大きさの花なら望遠で撮影することが多いようです。 理由は望遠の圧縮効果によって花が浮き出ることと 背景をさりげなくぼかすことができるからです。 この時花をどのように配置して切り取るかが一番大きな問題で 写真の良し悪しを決める大きなポイントになりますが この構図に関する話をするととても難しい問題もあるし 説明も長くなってしまうので別の機会に譲りたいと思います。 最初の写真は素直に正面から上と下の両方の花にピントを合わせて撮影しています。 ほぼ真ん中に花がくるような撮影ですが 緑の葉が左下に展開しているのでバランスの取れた写真になっていると思います。 どんな花でもそうですが花だけでなく葉の様子もうまく取り込むようにすることが 植物写真としてはとても大切なことになります。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200 焦点距離1650㎜
次は横から撮影した写真ですが
こちらを向いている花があったことによって 狙ってみたくなったカットです。 岩の間に咲く様子がよく分かりますね。 ただこの写真の場合はなんとなく分からせているだけで もっと明確に咲いている環境を写したい時には レンズも切り取り方も大きく変わります。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200 焦点距離160㎜ これは撮り方としては1枚目と同じ。 咲いている花のバランスが違うのでその面白さと 花の色が微妙に違うところも写したかったカットです。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200 焦点距離200㎜ これは下から見上げる位置に咲いていたイワザクラ。 もう少しボリュームがあった方がよかったのですが こんなアングルで写せる場所はここだけでした。 この時注意したのは花が黒い影の中に入って浮き出ること。 白い岩の中に少しでも花が入ると中途半端な写真になってしまいます。 ここまでは花のアップ気味の写真でしたが ここからは少し引いて咲いている環境がよく分かる写真です。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード マニュアル ISO200 焦点距離97㎜ 花が横一列に咲いている様子を切り取ったもの。 望遠で撮影していますが望遠でしか撮影できない場所なので この撮り方しかなかったというのが正直なところ。 でも花を下に配置するのか上に配置するのか真ん中に配置するのかによって見え方が変わってきます。 この場合は下の方が安定して落ち着きのある写真になったように思います。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f16 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ こちらは多くの花が咲いている様子をそのまま見せたかったもの。 だから広角レンズで絞り込んで撮影しています。 こんな時どこをどう切り取るか悩ましいところですが バランスをよく考えて撮影したいものです。 一つ言えば一番上にある1輪の花は意図的に入れました。 奥行きが広がって臨場感が生まれると思ったからです。 一番上の花がある場合とない場合を想像してみていただけると 分かってもらえるのではないでしょうか。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ これは広角レンズを使いながら絞り込まずに撮影したもの。 理由は絞って背後がもっと鮮明に写っても奥の花のインパクトはないと考えたから。 むしろ手前の花の様子を見せて奥にぼやっと咲いている様子が分かる方が 印象的な写真になると考えたからです。 以下の2枚の写真は同じようなアングルで絞りを変えて撮影したものです。 違いがよく分かるので見比べて下さい。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f16 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ 絞り16で撮影。 奥の花の様子も分かる写真となります。 手前の花をできるだけ大きく写したいとかなり接近して撮影していますので 全てがクリアーに写っている訳ではありませんが 広角レンズでは定番の撮り方です。 ポイントは手前にできるだけインパクトのある花を持ってくること。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ 絞り5.6で撮影。 手前の花だけにフォーカスしているので 花の印象が強くなります。 後の花がボケていることによって咲いている状況を想像させる役目があります。 どちらがいいということではなく 絞りによる違いを理解できているとその場で自分の意図した写真が撮れるようになります。 以下はレンズによる違い。 50㎜マクロと広角レンズの違いです。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 SIGMA 50㎜マクロ F2.8 f8 絞り優先モード オート ISO200 50㎜マクロで絞り8で撮影。 花が密に咲いていたのでその様子を切り取りたいと思って撮影しましたが 最初に選んだレンズは50㎜マクロ.。 花の質感を含め一番リアルに描写できると判断。 絞り5.6では後ろの花が少しボケ過ぎて見た目の印象とは違ってしまうので 絞り8にしています。 下の写真は花の大きさが同じくらいに写るようにして広角で撮影したもの。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f8 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離26㎜ 後の岩の大きさの写りが随分違うことが分かりますね。 花の印象は50㎜マクロの方が勝っていて 背景をより多く見せようとするなら広角の方が便利と言えます。 要はケースバイケース。 自分が何を見せたいかによります。 写真の上達を目指すとき、 自分の意図が明確であるかどうかが大きな要素となるような気がしています。 なんとなく撮るのではなく、こんな風に撮りたいと意図が明確であれば その意図に添った撮り方が出来るようになってきます。 なんとなく撮っているといつもなんとなく撮った写真になって いい写真が撮れても気に入らない写真も多くなります。 意図があると咲いている花の見え方も変わってきます。 また同じ花を撮っていても画角を変えたり 撮る方向を変えることで全く違う写真にもなります。 下の写真は上の花を咲いている状況を見せながら広角で撮影したものです。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f8 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ 花のアップの写真は見ている本人は感動して綺麗に見えるから撮る訳ですが 写真だけを見る側からすれば 花のアップの写真より咲いている環境の見える臨場感のある写真の方が 感動が伝わっていい写真に見えるものです。 だから写真展などで自分の作品を見せる場合、 アップの写真より広角で撮影した写真が多くなるのはそのためです。 最期に絞りに関しても考察をもう一度。 広角レンズで絞り4と絞り8の違いです。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f4 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ 絞り4で撮影。 奥の花はほとんどボケています。 手前の花の印象が強くなります。 撮影地 舟伏山 2020/04/16撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f8 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離16㎜ 絞り8で撮影。 ピントが深くなって比較すると絞り8の方が鮮明な写真です。 これをさらに絞り11や16で撮ればもっと違った印象の写真になります。 撮影する時、何を見せたいのか何を撮りたいのか その意図を明確にしたいものです。 いいか悪いかではなく あくまでも自分の意図するものがなんであるか。 それが写真にどう写しこめるか。 そこにかかっていると思っています。 つまり花を前にした時何が見えたかによります。 深谷 |