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樹の花を撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
オオカメノキ・ウリハダカエデ・ウワミズザクラ・ウツギ他

 今回の撮影シリーズは樹の花を撮ると題してお話してみたいと思います。野草と比べると樹の花は全般的に大きく、樹高も高いので野草の感覚とは少し違った感じになります。もちろん背が低くて野草と同じような感覚で撮影できる木もありますが、ここでは目線の高さで見られる樹の花を中心にお話してみようと思います。また樹木の種類は野草同様、大変多く千差万別ですが、たまたま6月に撮影した樹の花を題材にして解説できればと思います。6月は白い花が多く、少し華やかさに欠けますが、6月らしい瑞々しさを出すためにはどのような場面をどのように切り取るといいのか、レンズの選択は何がいいか、光をどのように捉えるといいか、またまた私の独断と偏見の記事になりますがお付き合いいただければ嬉しく思います。
 今回使用したカメラはNikonD810、レンズはTAMRON SP90㎜F2.8の1本きりです。本当は200㎜くらいの望遠で撮影してみたかったのですが、あいにく持ち合わせていませんでした。という訳でレンズの選択なんて書いていますが、90㎜マクロでどのように樹の花を撮るかとした方が良かったかもしれませんね。



撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f4.5 絞り優先モード オート ISO640 露出補正+0.7
オオカメノキ 1

野草も同じですが樹の花を撮影する時、まず綺麗な花を探しましょう。
当然と言えば当然ですが、綺麗な花が見つかれば、それだけで撮影は半分以上成功したことになります。
あとはどこをどのように切り取るかということですが、私が好んで撮影する方法は
樹の中に入って裏から撮影するものです。
裏から見ると当然外には明るい光があって葉や花が透けて見えます。
透過光で見る葉は鮮やかで葉脈もはっきりして生き生きとした表情に見えます。
葉があまり混み合っていないところを探すといいでしょう。
そしてその中に花を配置します。
その時の状況にもよるので何とも言えませんが、花を主役に持ってきたいので、
それなりに咲いているところがほしいですね。
このオオカメノキの場合、花はそれほど多くありません。
それでも葉の表情と森からこぼれる光が優しくてとてもいい感じでした。
ピントは中央の花に合わせながら、その左下の丸い葉と左上の小さな葉にも合わせています。
さらにポイントとなる枝にもピントが来るようにしています。
この写真の場合、黒い枝の役割も大きいのではないでしょうか。
柔らかいトーンの中の黒い枝が画面を引き締める役目となっているように思います。
絞りは解放気味に撮影すると花や葉が浮き立ってきます。背景のボケも玉になって綺麗だと思います。



撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f4.5 絞り優先モード オート ISO640 露出補正+0.7
オオカメノキ 2

これも1枚目と同じ意図で撮影したもので、同じ樹の下から撮影したものなので
よく似た写真になっていますが、1枚目より接近しています。
このような写真はやはり望遠系のレンズが向くと思います。
今回は90㎜マクロでしたが200㎜前後で撮影すると花や葉がもっと浮き立つ画像になります。
当然ボケも変わってきます。

次はオーソドックスに正面から切り取ったものを見てみましょう。



撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO400 露出補正-1.0
オオカメノキ 3

正面から撮影する場合は綺麗な花であることは言うまでもありませんが、花の付き方、
葉とのバランス、構図など要求される要素が多くなります。
特に見せたい花がどれなのか、見た瞬間にわかるように撮影したいですね。
この写真の場合、花が上と下に分かれていますが、見せたいのは下の花です。
理由は必要ないですね。下の方が整っています。
上もきれいに並んで整っていると視線が分散されて見た目は綺麗でも印象が薄れます。
葉の取り入れ方も重要で葉の全体が写っているのは右下のものだけです。
これは意図的にそうしたもので、葉の先まで見えることによって花とのバランスが取れているように思います。
下の花に注意を持ってくるのに役立っているように思います。
また白い花は晴れて日差しが強い時間帯ではなかなか綺麗に撮れません。
白飛びしたりコントラストが強くなったり影が出たりして、綺麗な写真にはなりにくいものです。
この日のように雨上がりの明るい昼間なんかは理想的かもしれません。
もちろん、日差しの強い時にはそれなりに撮影する方法もあるのですが、
最初の写真のように裏から撮影してみるのもお勧めです。
またそんな時は広角レンズも面白い画像を提供してくれます。
まあ天気や目の前の花の状況などを見ながらの判断となりますので、その辺は
経験するしかないかもしれませんね。




撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f4.5 絞り優先モード オート ISO400 露出補正-0.3
ウリハダカエデ 1


次はウリハダカエデの写真です。
この写真は裏から撮影したというほどのものではありませんが、
それでも葉は裏向きで半分ほど裏から撮影したと言えるものです。
柔らかい陽ざしの逆光が大好きで、樹の花を見ると潜り込みたくなります。
この写真のポイントは光り輝くウリハダカエデの花です。
順光ではなんの変哲もない写真になったと思いますが、逆光気味に輝き浮き上がるウリハダカエデの花が
印象的に見えるのではないでしょうか。
2枚の葉も画面構成の中で重要な役目を果たしています。



撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f4.5 絞り優先モード オート ISO400 露出補正-0.3
ウリハダカエデ 2

こちらはさらに花の印象を強く表現した写真です。
その分かなりアップで撮影しています。
背景をモノトーンですっきりさせてしまうのもこんな場合有効な手段です。
ただ背景の全てがモノトーンになってしまうと、扁平な印象になってしまうので、
写真のように玉ボケなど背景の様子が想像できるようなものが写っている方がいいでしょう。




撮影地 長野県 2015/06/19撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 露出補正-0.3
ウワミズザクラ

このウワミズザクラも裏から撮影しています。
なんとなくわかってきたのではないでしょうか?
この場面も表から撮影すると、普通の図鑑的な写真になってしまいます。
ところが裏から撮影すると花の表情もリアルになり背景も綺麗にボケてくれます。
雨上がりですので、なんとなく濡れている表情もわかりますね。
本当は下に垂れさがる二つの花にピントを合わせたかったのですが、
そうするともう少し右から撮影することになって、背景の緑が外れて左側に白い画面が多くなってしまいます。
それを避けるためにピント合わせは左の一つだけにしました。
結果的に右上の花の上部にもピントが合っていますが、これは結果オーライです。




撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 露出補正+0.7
ハウチワカエデ

これもハウチワカエデの花を裏から撮影しています。
ほとんどこのパターンが多いのは綺麗に撮影できるからなんですね。
ハウチワカエデの花は小さくてとても撮影しにくい花です。
花のアップを撮影しようと思ったら、条件が整わないとなかなか撮影できません。
目線より高い場所に咲いていることが多いし、風に揺られていることがほとんどです。
三脚を立てて望遠系のレンズで狙うことになりますが、いまだにいい写真が撮れていません。
今回のように花は小さくても大きな葉を取り入れると、ハウチワカエデらしくなります。




撮影地 長野県 2015/05/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO400 露出補正-0.7
ウツギ 1

これは5月に南アルプス林道で撮影したウツギの花です。
正面から撮影しています。
どんな花でもそうですが綺麗に咲いていても背景がごちゃごちゃしていると花が目立たなくなります。
背景が抜ける場面があればそれだけでいい写真が撮れそうな気がしてきます。
この場合は後ろに日陰の林があります。木々の間から光が漏れています。
白い花を撮影するには好条件が揃っています。
こんな時はそのまま撮影すればそれなりの写真が撮れてしまいます。
木漏れ日の白い玉が白い花に被らないよう気を使うだけでいいのではないでしょうか。



撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO400 露出補正-0.7
ウツギ 2

樹の花は裏から撮影するととても印象的で表情豊かな写真になるのですが、
ウツギのように花が密に咲き裏から見ると花が隠れてしまうような花は正面から撮るしかありません。
(案外裏からでも面白いかもしれませんので試してみるといいかもしれません、何事も試してみるといいですね)
それでも花の背後はできるだけすっきりと写したいものです。
状況によってはそれが難しい場合もありますが、こんな時は望遠レンズが威力を発揮します。
写真は90㎜レンズですが200㎜レンズならもっと花を浮き上がらせた印象的な写真になったはずです。
でもこれも好き好きですから、これがいいとか悪いとかは無いのですが・・・



撮影地 長野県 2015/06/18撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO400 露出補正-0.7
タニウツギ

これも花を正面から捉えてクローズアップしたものです。
どこをどう切り取るかは人それぞれですのでいいも悪いもありませんが、
花の蕊にピントが合うように撮影すると締まった感じになります。
できれば1ヶ所だけでなく複数個所ピントが合う位置を探しましょう。
また野草もそうですが、葉が画面構成の中で大きな役目を果たします。
花だけに注目するのではなく、葉や枝などにも配慮しながら構図を決めていきましょう。
構図に関しては別の機会にお話ししたいと思いますが、よく言われる日の丸構図はダメというのも
ケースバイケースになります。



撮影地 長野県 2015/06/19撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロF2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 露出補正-1.0
イワガラミ

最後はイワガラミです。
つる性の植物なので大きな木に絡みついて花を咲かせています。
見上げるような場面です。
こんな時、咲いている様子をそのまま撮るのが私は好きです。
望遠で部分的に切り取ることもしますが、見た時の印象をそのまま画面に収めることをまず最初に試みます。
写真は感動を写すものといつも言っているように、感動した場面は素直にそのまま切り取ってみると
後で写真を振り返った時に感動が蘇ってきます。
その感動は他の人にも伝えることができます。
あれこれ考えて撮影した写真からは感動があまり伝わってきません。
それは撮影者が感動から離れて思考で撮影しているからです。
思考を離れてハートで撮影するとなんかいい写真だねというものが撮れるような気がしてます。

ひょっとして私が撮影シリーズで伝えたいことはこのことかもしれません。
決してテクニックではないことを。


撮影シリーズに関して何かコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷


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