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気持ちの変化による撮り方の違い 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ミヤマタンポポ/キク科 

 二泊三日で野草仲間と白馬岳に登ってきました。撮影目的なので通常一泊二日で回るところを二泊三日にして、コースタイムの倍以上をかけるという行程です。これなら楽な行程に思えるのですが、実際には撮影するために立ったり座ったりのスクワット運動が多くなって知らず知らずのうちに足に来ます。一日歩き終えるとコースタイム通りに歩いた時と同じような疲労を感じました。でもやっぱり花の撮影を目的に歩くなら、これくらいがいいなと実感した次第です。
 さて、帰った後写真を整理していて気づいたことがありましたので、撮影シリーズの一つとして取り上げてみたいと思います。同じ被写体を行きと帰りでは撮り方が違ったという例です。撮影する時には自分の思いが入りますが、同じように撮ったと思っていたものが違っていたことに気づき、自分でも面白いと思ったので紹介してみたいと思います。



撮影地 小蓮華山 2015/07/12撮影 NIKON D810 SIGMA 50㎜マクロ F2.8 f5.6 WB オート 絞り優先モード ISO100 露出補正 +0.3

撮影したのはミヤマタンポポ。
高山植物の中ではあまり個性が感じられないので注目されにくい花ですが、
れっきとした高山植物です。平地で見るタンポポとほとんど同じように見えるので損をしていますね。
それでも山の稜線に咲いていれば勇ましさを感じるし、平地のタンポポとは育ちが違うことを見せてくれます。
これまで多くの山でミヤマタンポポを撮影してきましたが、
あまりぱっとした写真がありません。
それは撮影したほとんどが花のクローズアップ写真で
高山植物らしさを見せられるものではありませんでした。
平地のタンポポと似ている花を花だけの写真で見せても面白くありませんね。
だから高山に咲いているそれらしい写真が撮れたらいいなと予てから思っていました。
そして出会ったこの場面。
文句なしのシチュエーションです。
背景の山は白馬岳、これから目指す山を入れて撮影できれば言うことありません。
してやったり、いい場面が撮影できたと喜びました。

さてこれからが後になって気づいた面白い話。
翌日同じ場所で撮影したミヤマタンポポと比較してみてください。



撮影地 小蓮華山 2015/07/13撮影 NIKON D810 SIGMA 50㎜マクロ F2.8 f5.6 WB オート 絞り優先モード ISO100 露出補正 -0.3

一枚目の写真と何が違うのでしょう?
花を入れる位置は右下で同じです。
そう、背景の山が違いますね。
これは意図的に変えたものではありません。
その時その場で感じたように撮影しています。
ではどうして前日では白馬岳を背景に撮影し、翌日は杓子、白馬鑓ヶ岳を背景に入れたのでしょう?
同じ場所、同じような天気、ミヤマタンポポの状態もほとんど同じです。
なぜ白馬岳を入れて撮影しなかったのでしょう。
昨日撮っているから別のアングルにしようという意思は全くありませんでした。
見えたのはこのカットです。
つまり前日はこれから白馬岳を目指す過程での出会いで、白馬岳に関心が強く働いています。
翌日は下山しながらの出会いなので白馬岳に対する関心は昨日ほどではありません。
そんな心境の違いが写真の違いに現れているようです。
写真は心を写すものといつも言っていますが、図らずも自分の写真を見て、
心境の変化による見え方の違いを確認することができました。
心に映ったものが写真に現れるといういい例ではないでしょうか。

撮影シリーズに関してコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷

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