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レンズを替えてノジスミレを撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ノジスミレ/スミレ科 

 久しぶりの撮影シリーズですが、今回は1つの被写体をレンズを替えて撮影した事例を紹介したいと思います。予め撮影シリーズで紹介しようと意図して撮影したものではありませんので画角や絞り値など統一されていませんが、レンズの違いによる画角や描写の違いを感じていただければと思います。
 一般的に一つの被写体をレンズを替えて撮る場合は、イメージの違った表現をしたくて撮影しますが、今回は同じようなイメージの作品をレンズを替えたらどうなるかと思って撮影してみたものです。実際に被写体を前にした時、どのレンズを使用するかは見た瞬間に決めていることが多いのですが、今回のようにいろんなレンズで撮影してみたくなる被写体もあるんですね。いい被写体に出会った時はその傾向が強いようです。
 撮影したのはノジスミレ。比較的早く咲き出すスミレで人家周辺の道端や畦道などでよく見かけるスミレです。ところがノジスミレは綺麗な状態のものが少なく、全体的にボロボロとしていてだらしない感じのするスミレなんですが、今回出会ったノジスミレはこれまでに見たこともないほど堂々としていて美しいノジスミレでした。
 さてこのノジスミレを撮影するにあたって最初に選んだレンズは広角ズームレンズです。少し引いた状態で全体の雰囲気を写しておこうと思ったからです。この時、次はマクロレンズでクローズアップしようと決めていましたが、いい被写体を前にするといろんなバージョンで撮影してみたくなるものなんですね。そして撮影しながら思ったことは持っていたレンズ全て撮ってみようということでした。
 ということで一枚ずつ解説しながら進めていこうと思います。


撮影地 安城市 2016/03/21撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO100 露出補正+0.7 焦点距離23㎜

これが最初に撮影した1枚です。
咲いている場所の様子がなんとなくわかる写真にしようと思って構図を決めています。
右の方に青空があったのでそれも入れたかったのですが、
青空が入るように引くとノジスミレが小さくなって印象が薄れてしまうためにこの画角に決めました。
焦点距離が23㎜です。
そしてノジスミレをもっとアップで撮影したのが次の写真になります。




撮影地 安城市 2016/03/21撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO100 露出補正+0.7 焦点距離35㎜

一枚目と同じ位置からの撮影ですが焦点距離を35㎜で撮影しました。
この広角ズームレンズの最大倍率での撮影となります。
花の撮影はマクロレンズが主流ですが、こんな風に広角レンズで撮影したものも面白いですね。
背景をある程度見せる場合によく使用しています。
最もこの場合は背景をぼかすことを意識しているので絞り込んでいないのですが、
普段広角レンズを使う時は絞り込んで手前から奥までピントを合わせて広がりを見せる撮り方をよくします。
この場面は絞り込まない方がいいと判断しました。



撮影地 安城市 2016/03/21撮影 NikonD810 SIGMA 50㎜マクロ F2.8 f4 絞り優先モード オート ISO100 露出補正+0.7

そしてこちらが50㎜マクロレンズで撮影したものになります。
花の印象をより強調した写真です。
背景のボケがより強くなっています。
さらに遠近感が圧縮されていますね。
後のボケた花の大きさを見比べてください。
小さい花を撮影する時は好んで使用しているレンズです。
今回は意識的にf4で撮影していますが、ほとんどの場合f5.6での撮影が多くなります。
スミレのように側弁が手前から丸くカールするような花の接写で少しピントを深くしたい場合は
f8まで絞ることもあります。



撮影地 安城市 2016/03/21撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO100 露出補正+0.3

そしてこれが90㎜のマクロレンズでの撮影になります。
背景はさらにぼけて手前の花の.印象がさらに強くなります。
この写真は意識的に少し引き気味にしていますので、上の50㎜マクロレンズの撮影とよく似た感じにも
受け取れますが、背景のグリーンの帯の幅が太くなっているのがわかるでしょうか。
遠近感がさらに圧縮されています。
レンズの選択は何をどう見せたいかによって変わってくるので
自分に合ったレンズを見つけるといいですね。
背景のぼかし方や絞りの値は好みもあるのでこれがいいという訳ではありません。
図鑑的に背景もはっきりわかる撮り方の方がいいこともあります。
好みやその時々の状況によって決めていきます。




撮影地 安城市 2016/03/21撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO100 露出補正+0.3

これも90㎜マクロレンズでの撮影ですが、もう少し花に接近して花が大きく写っています。
やや心象的な写真になります。



撮影地 安城市 2016/03/21撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO200 焦点距離200㎜ 露出補正0

最後はカメラを替えて望遠ズームレンズでの撮影です。
焦点距離200㎜での撮影ですので、さらに圧縮されて花だけがぽっと浮かび上がったような写真になります。

こうして見てみると同じ被写体を撮影しても、レンズによって随分違った描写をすることがよくわかります。
どんなレンズでどのように撮影するかは人それぞれですので、自分の好みに合ったレンズワークを見つけるといいですね。
その為にもどんな写り方をしてどういう表現ができるかは色々と試して知っておく必要があると思います。

一つだけお断りしておくと、NikonとCanonでは発色が違います。
どちらもホワイトバランスはオートで撮っています。
オートで撮った場合、実際の色に近いのはCanonの方かなと思いますが、光線状態によっても変わってきますので
一概には言えません。
RAWで撮影しておけば補正をかけることも可能ですので
失敗を防ぐためにもRAWで撮影されることをお勧めします。


毎回お話していますが、この記事は私の個人的見解によるものです。
写真には正解はありませんので参考程度に受け取っていただければと思います。


撮影シリーズに関して何かコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷


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