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セリバオウレンを撮る 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
セリバオウレン/キンポウゲ科 

 早春に咲く花の一つにセリバオウレンがあります。決して大きな花ではありませんが少し薄暗いような林の中で立ち上がって咲く姿はとても美しく感動します。まだ春と呼ぶには早い時期に咲くために他の花の姿はなくセリバオウレンの白い花だけがライトを浴びたように輝きます。
 毎年どこかでセリバオウレンに会い撮影を楽しんでいますが、セリバオウレンの魅力を伝えられる写真を撮るのはなかなか難しいものです。明るい陽ざしの中で咲く花なら比較的容易に向き合えるのですが、薄暗かったり雑然とした林の中だったりすると、セリバオウレンの花の魅力を引き出すのが思いのほか難しいものです。花火のように四方に広がった花の接写を楽しむだけならあまり状況を考えずに接写すればいいだけですが、周囲の状況を取り込みながら雰囲気のある写真にするのは大変難しいと感じています。それなりの条件の整った素敵な場所があればいいのですが、実際にはなかなかまとめにくい場所であることが多いようです。
 今回は2017年2月28日に撮影した写真を中心にその時の状況やどんなことに注意しながら撮影したかお話してみたいと思います。写真の良し悪しというより私がどんな風に写してみたかったかをお伝えできればと思います。
 


撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード ISO640

セリバオウレンの花を見て美しく感じ、接写をしてみたくなる花は
たいてい雄花であることが多いようです。
それは花弁状の萼片と花火のように広がる雄しべとのバランスがよく
とても均整の取れた姿だからなんですね。
そしてこの写真のように雄しべの葯の先がほんのりとピンク色を帯びていると
さらに美しく感じます。
したがってこの花を接写する時に写したかったポイントの一つは
葯のピンク色です。
マクロレンズでの撮影ですが葯の表情を浮かび上がらせて雰囲気を出すには
50㎜マクロより90㎜マクロの方がいいだろうという選択です。
こんな場合も一つの花だけより二つの花にピントが合うように撮影すると画面が引き締まります。
もう一つの留意点は蕊にピントを合わすと同時に花弁(萼片)にも必ずピントを合わせるということ。
これによって花の表情が鮮明に見えてきます。
また微妙なピント合わせが要求されるので、こんな場合は必ずマニュアルでピントを合わせるようにしています。
でも最近は目が悪くなって合っているのかよくわからなくなってきました。




撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード ISO640
これも同じような接写ですが
花が両性花と言われるもので雌しべが真ん中に突き出ています。
したがってピントは雌しべを中心に雄しべにも合うように撮影しました。
花弁(萼片)にずばりピントが合っているものがありませんが
背景の色との絡みで浮かび上がっているのでこれでもいいのかなと思います。

マクロレンズで接写をする時はどこに魅力を感じて何を写したいのか明確にできれば
それなりの写真になるのではと思っています。
もちろん構図であったり他の花とのバランスであったり、ボケ具合であったり
背景の色や光の捉え方など様々な要因が写真には求められますが、
その全てを解説することはできませんのでこの辺にしておきます。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード ISO640
これも両性花ですが蕊は白いですね。
この写真は花のバランスに美しさを感じて写した一枚です。
縦に切り取ることによって主役が鮮明になり花の美しさや特徴もよくわかるのではと思って撮影しています。
背景が暗いので白いセリバオウレンの花が浮かび上がったように思います。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO400
この写真と次の写真は咲いている佇まいを望遠系のレンズで撮影したものです。
咲いている雰囲気重視の写真です。
日が当たっているわけではないので花をどのように浮かび上がらせるかということと、
背景をいかにすっきりさせるかがポイントになります。
ですから花の真横から狙って背景にごちゃごちゃしたもののないところを狙わなければなりません。
理屈ではそうなんですがなかなかそんないい場面は見当たらないのが普通です。
たまたま運よくそんな場面に出会えた時にこんな撮り方をするということでしょうか。
無理やりどこか探して撮影してみてもたいていボツ写真になります。
野草の写真はあくまでも出会いですから、自分の策略がはたらくと失敗します。
ここが一番大切なポイントかもしれません。



撮影地 岐阜市 2016/02/24撮影 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4 f5.6 絞り優先モード ISO400
これは昨年の写真です。
つまり雰囲気のある写真を撮る場面が今年は1ヶ所しかなかったということなんですね。
まあ見つけられなかったということです。
望遠系のレンズを使って雰囲気のある写真にしたい時、
私は必ず足元を見せるように心がけています。
足元が見えると生えている環境とセリバオウレンの成長ぶりや
勢いも見えてきます。
植物写真では大変重要なポイントではないかと思っています。
もちろん葉も重要になってきます。
全体の姿を見せながらすっきりとまとめることができれば
ある程度成功したと言えるのではないでしょうか。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO640
さてここから3枚は同じ被写体を視線を変えて撮影したものです。

撮り方によって見た目の印象も変わってきます。
これが写真の面白さであり、私にとっては遊びなんですね。

まず最初のこの写真は見たままそのままにセリバオウレンの全体を写したものです。
普通の写真ですが素直に写した写真は自然な感じがしていいものです。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO640
そしてこれは少し引いて後の林の様子も写した写真です。
いわゆる咲いている環境のわかる写真ですね。
花の接写も楽しいし雰囲気を出す写真も面白いし
こんな周りの様子もわかる広角の写真も面白いですね。
個人的には花の接写より好きな撮り方です。
ただし広角で狙いたい場面はそれほど多くないというのも事実です。
特にこの日は一目でここだという場面には出会えませんでした。
ということはこの写真は探して撮影した写真なんです。
そのために少し無理があるし、決していい場面とはいえないものですが
撮影の一つのアイデアとしてくみ取って頂ければと思います。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f4 絞り優先モード オート ISO640
そしてこれは下から空も入れて撮影してみたものです。
本当は抜けるような空であるとか、林の様子がもう少しすっきりしているといいのですが
この場所からですと限界がありました。
こんな撮り方をする時は、本来ならセリバオウレンの花が引き立たなければならないのですが、
背景の中に沈んでしまっています。
無理して撮るとこんなもんです。
まあ撮影のバリエーションを知って頂ければと思って
あえて撮影してきました。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO640
これは足元に咲くセリバオウレンが奥の方まで咲いていたので
その様子を切り取ったものです。
日が差してきて奥の花が白飛びしていますが、その時の状況なので気にしないということで。
構図としては左下から右上にかけての流れと少しだけ空が入っているのがポイントになります。
ほんのちょっとの空で奥行き感が出ているのではないでしょうか。
もっとこうだったらという注文はいくらでもありますが、
その時の状況の中でどう切り取るかと思い巡らすのも
楽しく練習になるものです。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f5.6 絞り優先モード オート ISO640
斜面に咲く二株のセリバオウレンを広角で撮影しました。
花だけの接写もこの場面では物足りないし、
ここは広角で林の様子を入れた方が絵になると思ったからこんな風に撮影してみました。
セリバオウレンは白い花なのでできるだけ背景が黒くなる場所を選びながら
林の様子がイメージできるように撮ったつもりです。
要はその時にどのように感じたかなんですね。
同じ場面でも曇っていれば違った撮り方をしたでしょうし
違う角度から目に入ってきたら、当然見え方も違います。
その時心に映ったもの、感じたものを画面の中に取り込むことが大切だと思います。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO640
ここからは少し趣を変えて印象的だった場面を切り取った写真です。
まずこれは花が完全に開ききる前のもので、まだ蕾のものもありますね。
でも美しくきれいです。
その美しさは初々しさでしょうか。
雄しべもまだ伸びる前の姿ですね。
こんな風に感じたものをそのまま撮ればいいですね。
この時は背景の玉ボケの入る位置を意識しています。
主役の花の中に玉ボケが入るとうるさくなるので、花からは外すようにして撮影しました。



撮影地 岐阜市 2014/03/02撮影 Canon5DⅡ SIGMA 70㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モードISO400
これは3年前の写真ですが
前日の雨によって花も落ち葉も濡れています。
しかも花はようやく落ち葉の間から顔を覗かせるように咲きだしてきたもの。
その全ての条件が普段見慣れている光景とは違ったものでした。
だから目に留まるし撮ってみたくなるんですね。
こんな質感が出せるのもマクロレンズならではと思います。
ちなみにこの時は70㎜マクロです。



撮影地 岐阜市 2014/03/02撮影 Canon5DⅡ SIGMA 70㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モードISO400
そしてその同じ日に撮影したものをもう一枚。
同じように濡れたセリバオウレンですが
こちらの方が立ち上がってそれらしい姿です。
やっぱり濡れている様子がいいなと思います。



撮影地 岐阜市 2017/02/28撮影 NikonD810 TAMRON SP90㎜マクロ F2.8 f5.6 絞り優先モード オート ISO640
これは一つのテクニックとして。
写っている花だけでは絶好のモデルとはいい難いし、
そのまま写してもあまりインパクトのない間延びした写真になってしまいます。
そのために前ボケを入れて画面の隙間を埋めています。
これは意図的に撮影していますが
この場面も実際にはその場にいて初めて見えてくる撮り方です。
でもこういう撮り方は多用しない方がいいですね。
やっぱり素直に綺麗な花を写すのが基本中の基本だと思っています。


撮影シリーズに関して何かコメントを頂けると嬉しく思います。

深谷


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