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入笠湿原でチダケサシを撮る 広角レンズ編 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
チダケサシ/ユキノシタ科 

 今回は「入笠湿原でチダケサシを撮る」を広角レンズ編と望遠レンズ編に分けて紹介します。
 まずは広角レンズ編から。
 入笠湿原には随分前から季節を変えて撮影を続けていますが、チダケサシがこんなに多く咲くのを見たのは今年が初めて。びっくりするほど群生していました。そこで群生の様子を撮影するには広角レンズがいいので、撮ってきた写真を紹介しながら私なりの撮影のポイントを紹介したいと思います。
 このシリーズでは何度もコメントしていますが、これはあくまでも私流の撮り方であって、これが正しいというものではありませんので参考程度にしてもらえたらと思います。



撮影地 入笠湿原 2019/08/10撮影 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO800 焦点距離22㎜ 露出補正 -0.7

まだ陽が当たる前の時間帯(朝5:50)のためシャッタースピードを稼ぐためにISO800で撮影しています。
シャッタースピードは1/30秒。絞りはf11。
ピントは中央手前のチダケサシ。
花が群生する様子を20㎜前後の広角撮影をする時には絞りをf14とかf16まで絞ることが多いのですが
この時は敢えてf11。
その訳は奥まで花が咲いている訳ではないことと、霧の中の白樺等が藻っていたので
そこまで絞り込む必要がないと判断。
それから22㎜という微妙な焦点距離なのは、左上に写っている枝があまり入らないようにズームした結果です。
枝がなければ16㎜で撮影していたことでしょう。
広角レンズは広がりと奥行きを出すために使うことが多いのですが
思い切って花に近づかないと花の印象の薄い写真になります。
どんなに大群生していても手前にインパクトのある花を持ってこないと
中途半端な写真になります。




撮影地 入笠湿原 2019/08/10撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO800 焦点距離24㎜ 露出補正-0.7

これは上と同じ場所から縦で切り取ったものです。
こちらの方が構成上は上手く収まっている写真のように思えますが
縦にしたので広がりは半減していますね。
その分奥行き感がはっきりしてまとまりがあるように思います。
手前のチダケサシにピントを合わせて花に意識を持っていることはもちろんですが、
奥の白樺の樹が手前から順に霞んでいく様子が遠近感を作り出してくれました。
そして背後の山の稜線を見せることで遠近感と奥行き感が一層出たと思っています。
もちろん撮影する時に意識的に狙って撮影しています。



撮影地 入笠湿原 2019/08/10撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO800 焦点距離32㎜ 露出補正 0

これも同じ場所からの撮影ですが1枚目で左上に枝が写っていると言った白樺を
取り入れて撮影したものです。
少し明るめに撮影したのは白樺の幹の白さを出したかったからです。
撮影はその時の状況に応じた撮り方をするといいですね。
同じ場所から撮影していても切り取り方によっで随分違った写真になります。
そこが写真の面白さでもある訳です。




撮影地 入笠湿原 2019/08/10撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO800 焦点距離22㎜ 露出補正 -0.7

場所を変えて撮影したチダケサシの群生の様子です。
手前から奥に咲く様子を撮影する場合
画面構成上、少し変化のある場面を切り取るようにするといいと思っています。
手前からびっしり群生している場面があれば、それはそれでいいのですが
ともすると変化のない平面的な画像になりやすくなります。
例えばニッコウキスゲがびっしり一面に咲く写真はよく見かけますが
写真としてはあまり面白くないものです。
少し変化があった方が写真を見る側の視線が動いて、
その場の状況を印象的に捉えてくれるような気がします。
この写真は手前にチダケサシが密集している訳ではありませんが、
コバギボウシの青紫色が変化を与えてくれています。
写真を見た時、チダケサシの群生する全体の雰囲気を最初に見ることができますが、
その次に視線はコバギボウシに行くはずです。
そして順に真ん中の様子を見て、奥の霧に霞む様子へと視線が動くのではないでしょうか。



撮影地 入笠湿原 2019/08/10撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f16 絞り優先モード オート ISO800 焦点距離16㎜ 露出補正 -0.7

これまでの写真とこの写真の違いは絞りをf16まで絞って焦点距離16㎜で撮っていることです。
群生しているのでその様子をできるだけ広くそして奥までピントを合わせようと試みた写真です。
その時の状況からしてこの撮り方をしてみたくなったのは頷けますが
写真としてはとても中途半端な写真です。
まず画面構成が中途半端。
手前のチダケサシの位置も右のチダケサシの切れ方も左のワレモコウの中途半端な入り方も
意識が働いていなかったことがよく分かります。
後の山も入れて霧の様子と群生する様子を撮るんだという意気込みだけの写真ですね。
群生する場面を撮る時、とかくこんな風な失敗をしがちですので注意しましょう。
あれもこれもと思うのではなく、その場の状況を見て
どこをどう見せるといいか冷静に判断したいものです。





撮影地 入笠湿原 2019/08/10撮影 NikonD810 NIKKOR16-35㎜ F4 f11 絞り優先モード オート ISO800 焦点距離30㎜ 露出補正 -0.7

最期は個人的にはまずまず写せたかなと思う写真です。
チダケサシの色の変化とコバギボウシの存在。
そして奥まで群生する様子と霞む木々と山。
バランス的にはうまく撮れたと思っていますがいかがでしょう?

広角レンズで撮影する時、まずは画面構成が大切になります。
何をどう見せたいのか、何に心が留まったのか、
その自分のイメージを写真を通じてどう表現するか。
とても難しいことですが
撮影した写真を振り返りながら、撮影した時と改めて写真を振り返った時の違いを感じてみると
次に撮影する時のヒントが見つかるかもしれません。


「入笠湿原のチダケサシを撮る」 望遠レンズ編に続きます。


深谷


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