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高山植物の咲く風景 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ハクサンイチゲとシナノキンバイ 撮影地 赤石岳 2011/07/17撮影 NikonD300 SIGMA17-70㎜

  この写真の場面は決して大群生しているわけではない。ハクサンイチゲもシナノキンバイもそこそこ咲いてはいるが、目を見張るようなお花畑とは違う。それでも敢えて紹介するのは私の思いが詰まっているからである。写真は人に見せるためのものではなく自分の思いを一枚の画像に写しとめるもの。そこから人が何かを感じ取っていただければそれに越したことはないが、あくまでも自己表現する手段だと思っている。
 さてこの場面は疲労困憊している時に出会った光景である。南アルプスの赤石三山をぐるっと一巡りする山行を計画しての二日目だった。通常は3泊4日で巡ると充実した山行となるコースを2泊3日で計画した。つまり二日目がかなりハードな行程だった。好きな高山植物を撮影しながらも時間を気にしなければならないロングコースが2日目だった。撮影モードと歩行モードを切り替えながらの山歩きをしていたが、少し長い時間を歩くと膝の痛みも加わって息も上がってくるようになった。そんな時に出会った場面が上の写真である。斜面を下りかかった場所に咲いていた。突然現れたお花畑と言ってもいい。嬉しくてその場で休息をとったのは言うまでもない。
 高山植物の魅力は花の美しさや景観だけでなく、出会った時の状況も大きなウェイトを占めている。その時の自分の状況によって見え方も違ってくる。この場面がいつまでも記憶に残っているのは、花たちから大きなエネルギーをもらったからに他ならない。
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