back

高山植物の咲く風景 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
ハクサンコザクラ Primula.cuneifolia var.hakusanensisサクラソウ科 撮影地 朝日岳 2013/08/12撮影 Canon5DⅡ Canon17-40㎜

  高山植物の群生風景は雪田周辺で見られるものが多い。雪解けと共に一気に花を咲かせるその姿からは春を待ちわびた花たちの歓喜の声が聞こえてくるようだ。ハクサンコザクラはサクラソウ科を代表する高山植物である。花の色もその佇まいも全てが可憐で美しい。
 山に登ってどこで群生風景に出会えるかはわからない。群生する場所を知っていても毎年同じように群生するとも限らないし、ちょうどいい時期に巡り合えるとも限らない。それだけに高山植物との出会いはドラマチックなのである。里に咲く花なら下見もできるだろうし、もう一度訪ねてみることも可能だが、山はそんなわけにはいかない。一週間違えば花の様子はすっかり変わってしまう。一期一会という言葉が高山植物観察にはそのまま当てはまる。だからこそ群生する風景に出会えた時は運が良かったと感謝しなければならないと思うし、自然の前では謙虚にならなければならないと思う。ありがとうという言葉が自然に出てくる自分でありたいといつも思っている。
 写真のハクサンコザクラは決して大群生しているわけではない。広角レンズを使用してそれなりの広がりを写しとめているにすぎないが、残雪と背景の山々との景観がハクサンコザクラの咲く様子を表現するには素敵な場面だと思った。この出会いも一期一会、再び同じ景観に出会えることはないだろうと思う。だからこそ高山植物は愛しく美しい。
inserted by FC2 system