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魅惑の高山植物 写真 深谷利彦 Toshihiko Fukaya
雲ノ平を巡る花旅~山風景と咲いていた花 撮影地 折立~太郎兵衛平~雲ノ平~三俣蓮華山~黒部五郎岳~折立 2016/07/31~08/04撮影




撮影地 黒部五郎岳 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
黒部五郎岳の稜線から望むカールと槍穂高
最終日の5日目の朝は気持ちよく晴れ間が広がった。
黒部五郎小舎のテン場を朝5時前に出発して2時間、稜線に立つと雄大なカールの向こうには槍穂高がよく見えた。
この光景が見られただけでもこのルートを歩いた甲斐があると一人悦に入った。

  念願の雲ノ平を巡る花旅と言うか山旅は山の奥深さと大きな広がりに圧倒される山歩きとなった。できればずっとすかっと晴れた青空の広がる中で広大な風景を見たかったが、それでも午前中は晴れる日も多く山の景観を楽しむには十分すぎるほど様々な表情を見せてくれた。ここで紹介する山の写真はその中のほんの一部だが行程を振り返りながら一緒に楽しんでいただけたらと思う。

折立から太郎平小屋までに咲いていた花

   
ミヤマママコナ/キンコウカ/イワショウブ/オオコメツツジ
    
ミヤマリンドウ/タテヤマリンドウ/コバノトンボソウ/ネバリノギラン/ヤマハハコ
 
アカモノの実/ゴゼンタチバナの実


太郎平小屋が見えてきた

 
太郎平小屋


太郎平、薬師峠付近に咲いていた花
   
ミヤマアキノキリンソウ/タカネヨモギ/ホソバノキソチドリ/イワイチョウ
   
シラネニンジン/ミヤマリンドウ/ウラジロタデ

 
ミヤマホツツジ/ミヤマコウゾリナ


薬師峠にあるテン場



撮影地 太郎兵衛平 2016/07/31 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
折立から入山し、お昼前には太郎平小屋に到着した。
早めにテントを設営して初日の疲れを取ろうとテントの中で横になっていると雨が降り出してきた。
雷雨にならなければいいと思ったが、運よく少し降っただけで天気が回復してくれた。
夕方西の空が紅くなり始めていたので、太郎平の見晴らしのいいところに行って夕日の撮影。
明日からの天気を信じて。




撮影地 太郎兵衛平 2016/08/01 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
2日目の朝は祈りが通じていい天気。
今日は雲ノ平まで入るぞと気合を入れて出発。
写真は薬師峠のテン場から太郎平小屋に向かう木道からのもの。

山は左が北ノ俣岳(2661m)、右の太郎山(2373m)、ここは最終日に通過してくる予定。
薬師沢から雲ノ平に行くにはその少し手前で左に折れることとなる。




撮影地 太郎平小屋~薬師沢小屋 2016/08/01 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
薬師沢に下りる前に日の出を迎えた。
コバイケイソウの葉が朝日に照らされて印象的だった。
山は薬師岳から東南尾根。

太郎平小屋から薬師沢小屋に咲いていた花
     
イワオトギリ/クロトウヒレン/オヤマリンドウ/ホソバトリカブト?/チダケサシ/サラシナショウマ
  
チングルマの花穂/ミヤマアキノキリンソウ/コウメバチソウ


薬師沢小屋

薬師沢小屋から雲ノ平に咲いていた花
   
ミヤマダイモンジソウ/カニコウモリ/ゴゼンタチバナ/シラタマノキ



撮影地 雲ノ平 2016/08/01 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
薬師峠のテン場から薬師沢小屋まで約3時間、
昨日せっかく登ってきた標高を一気に下げてしまうのはもったいないがしょうがない。
そこから雲ノ平に向けて急登があることは知らなかった。
狭くてよく滑る岩場の急登が2時間続き、疲労困憊。
やっとの思いで登り切り木道が現れてくると雲ノ平の懐に入ったことを知る。
左の山が水晶岳(2978m)、右は祖父岳(2825m)
やれやれの思いで撮影した。


 
雲ノ平山荘に到着

雲ノ平のテン場 小雨の降る中テントを設営
雲ノ平に着きテントを設営しようと思ったら雨が降り出し、小雨になるまで1時間待機。
小降りになったのを見計らってテントを設営。その30分後から再び雨が強くなり土砂降りとなった。
雷も鳴り始めた。あまり経験したことのないようなすごい雨だった。風が吹いていなかったことだけが幸いだった。


雲ノ平周辺に咲いていた花
   
エゾシオガマ/ミヤマアカバナ/ミヤマアキノキリンソウ/ハナニガナ
    
ウサギギク/ヨツバシオガマ/シラネニンジン/イワオトギリ/ミヤマセンキュウ



撮影地 雲ノ平 2016/08/02 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4

そして翌朝、雨はあがったもののあまりすっきりしない天気。
身軽にして高天原の温泉まで行く予定でテン場を出発。
雲ノ平らしい広がりのある光景にカメラを向ける。
写真は手前がコバイケイソウの群生地だが今年は花付きが良くなかったようだ。
温泉に入りたい気持ちで歩いていたが雲の様子が気になりだした。



撮影地 雲ノ平 2016/08/02 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
ハイマツを見下ろしながら雲ノ平の風景を楽しむ。
高天原温泉まではまだまだルートが長いがなんとかなるだろうと進めたが、
この後急速に厚い雲が広がりはじめ、結局1時間ほど歩いたところで引き返すことにした。
この判断は正しかったようで昼前から降り出した雨は豪雨となり、翌朝まで止むことがなかった。



高天原温泉を諦めてテン場に戻ったが時間が早いのでどうしようか迷った。
予定では温泉に入って戻ってくると午後になるので雲ノ平でもう一泊する予定にしていたが
午前8時半にテン場に戻ってしまった。
午後から絶対に雨が降る予感がしたのでそのまま一日待機するのももったいないので
少しでもルートを稼ごうと思って三俣山荘まで移動することにした。
その途中、雲ノ平を撮影しに来たNHKの撮影クルーに遭遇。放送予定は9月とか。


雲ノ平から三俣山荘に咲いていた花
   
イワギキョウ/アオノツガザクラ/チングルマ/ハクサンフウロ
   
ヨツバシオガマ/ハクサンボウフウ/クルマユリ/イワオトギリ
   
ミヤマキンバイ/ホソバトリカブト/オニシモツケ/マルバダケブキ



撮影地 三俣山荘 2016/08/03 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
3泊目の三俣山荘近くのテン場の朝

雲ノ平から三俣山荘までは巻き道を利用すれば3時間。
午前9時半過ぎに雲ノ平を後にした。
すると予定より早く雨が降り出してきた。慌てて雨具を身に着けカメラが濡れないように対策を施すが
どうしてもいくらかは濡れてしまう。それに半端でない汗をかいているので、雨具を身に着けても全身ずぶぬれ状態。
3時間ほどの移動なら大したことないだろうと思っていたが、ヘロヘロの状態で到着した。
雨は小降りだったので急いでテントを設営。
そしてその後信じられない程の強烈な雨に見舞われることとなった。
結局雨は明け方近くまで降り続き、トイレの為に外に出るのもためらわれるほどだった。

明け方、外を覗くと雨も上がり朝焼けも始まろうとしていた。その時撮影したのが上の写真。
それでもこの朝焼けは一瞬にして消えてしまった。



撮影地 三俣山荘~黒部五郎小舎 2016/08/03 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
三俣山荘のテン場を出発して、とりあえず黒部五郎小舎を目指して歩き始めた。
三俣蓮華岳の山頂を踏んでいこうと思っていたが、雲の流れが早く山はガスに包まれていたので
ピークハンターでない私は巻き道コースを選択し時間を稼ぐことにした。
その途中で撮影したのが上の写真。
山は鷲羽岳(2924m)。



撮影地 三俣山荘~黒部五郎小舎 2016/08/03 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
上の写真の近くで残り少ない雪渓を入れて撮影。
もともとこのコースを歩く人は少ないが、平日なので会う人は本当に少なかった。



撮影地 三俣山荘~黒部五郎小舎 2016/08/03 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
歩いてきたコースを振り返った時に初めて槍ヶ岳が見えていることに気づいた。
嬉しい展望に一気に気力が回復。



撮影地 三俣山荘~黒部五郎小舎 2016/08/03 Canon5DⅡ Canon EF70-200㎜ F4
せっかくなので望遠レンズで槍の雄姿を撮影。



撮影地 三俣山荘~黒部五郎小舎 2016/08/03 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
三俣蓮華岳の巻き道コースにはところどころにお花畑もあって撮影を楽しみながら進める。
写っている花はミヤマキンポウゲとハクサンボウフウ。



撮影地 三俣山荘~黒部五郎小舎 2016/08/03 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
黒部五郎小舎が見えてきた。山は黒部五郎岳。
もともと4泊目のテン場は黒部五郎小舎と決めていたが、昨日三俣山荘まで移動していたので、ここまでの移動は2時間ほど。
まだ時間も早いしどうしようかと迷う。
但しこの先太郎平小屋まで山小屋はない。黒部五郎小舎から太郎平小屋まではコースタイムで6時間。
歩けない距離ではないが、休憩しながら行くと到着が午後4時ごろになりそう。
かなりしんどいだろうなという思いと、昨夜の雨で荷物がかなり濡れていることも気になった。
そこでこの日は早々とテントを設営して荷物を乾かすことに専念し体力を温存することに決めた。

 
黒部五郎小舎

黒部五郎小舎近くのテン場
午前中は陽射しもあって濡れた服やシュラフなどをのんびりと乾かした。

三俣山荘から黒部五郎小舎に咲いていた花
   
ジンヨウスイバ/クロクモソウ/ミヤマダイコンソウ/ウサギギク
   
ミヤマキンポウゲ/ヨツバシオガマ/ハナニガナ/ハクサンボウフウ


撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
最終日の朝、黒部五郎小舎を後に気合を入れて歩きはじめる。
天気は晴れ、これまでで一番いい天気となった。
鷲羽岳や水晶岳もよく見えて展望がいい。撮影しながらの楽しい山歩きだが、ここでカメラに曇りがあることに気づいた。
レンズも中に曇りが見られ液晶も若干の曇りが見られた。
まずい!
とにかく乾かすしか方法がないので、日が当たるように持ちながら歩いた。



撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
朝の光は何かとドラマチック。
空気もひんやりしていて快適な山歩きだ。




撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
黒部五郎小舎のテン場を出てから1時間半で雄大な黒部五郎岳のカールに到着。
ここはお花畑の広がる場所で特にコバイケイソウの群生は見事と聞く。
少し遅いだろうなと思いながらも期待していたが、ほとんど何も咲いていなかった。
残念、もう少し早い時期に来なさいということなのだろう。
それでも快晴の青空のもとにでんと構える黒部五郎岳とカールはなかなかのスケールで圧巻だった。



撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
カールを右に詰めて高度を上げていくと槍穂高が見えるようになってきた。
かなり疲労していたがやっぱりこんな景色を見ると元気が出てくる。
この景色を見ながらコーヒーを出してしばらく休憩した。




撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
昨日までの天気と違って、雲も爽やかで気持ちがいい。
黒部五郎岳の稜線からは北ノ俣岳や薬師岳がよく見え
これから帰路として歩くルートもはっきりと見えていた。
すぐにでも着きそうな気がしたが実際はかなりの時間を要した。



撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
左のなだらかな山が北ノ俣岳で右が薬師岳。
その鞍部に太郎平小屋がある。




撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
黒部五郎岳を振り返る
雄大でいい山だ。




撮影地 黒部五郎小舎~太郎兵衛平 2016/08/04 NikonD810 NIKKOR VR16-35㎜ F4
北ノ俣岳から太郎平小屋に下りる途中にあった湿地。
なかなか美しい景観だった。




黒部五郎小舎から太郎平小屋に咲いていた花
   
トウヤクリンドウ/ミヤマリンドウ/ハイマツ/ハクサンボウフウ
   
イワショウブ/ウラジロタデ/タテヤマリンドウ/イワイチョウ


そしてお昼過ぎに太郎平小屋に到着、入山から5日目にして元の場所に戻ってきた。
そして小屋でうどんを食べて折立まで一気に下山した。

 
そして無事下山

長いコースだったが記憶に深く刻まれる充実した山行となった。
テントで4泊5日の山旅は無理だろうと思っていたが、やってみるとまだまだやれるぞという自信にもなった。
山は無理をしないことが第一。行程に余裕を持つこと。
コース変更も適宜行えるゆとりを持つこと。
そんなことが大事だし、それが山を楽しむ秘訣と思っている。
今回黒部五郎岳に登った前日の夕方、テン場の上空にヘリが飛来していた。
何だろうと思ったが、翌日、黒部五郎岳で滑落死亡事故が起きたことを知った。
60過ぎの男性らしい、私と同年代である。
楽しいはずの山が一瞬にして不幸に繋がることだってある。
滑落の原因は浮石を踏んでバランスを崩して転落したという。
浮石を踏んでも疲労していなければたぶん転落することもなかっただろうと思う。
疲労が事故の一番の原因となる。だからこそゆとりのある計画が必要だし、
必要に応じて休憩を取ったりエネルギー補給をする必要がある。
山の楽しみ方は人それぞれでいろいろだが、安全第一、体調第一で山に臨みたいといつも思っている。



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