霜は芸術家　写真　深谷利彦　Toshihiko　Fukaya

道端や空き地に蔓延るカナムグラ。身近な野草の一つであっても親しみを持って眺める人はまずいない。綺麗な花が咲くわけでもなく、麗しい佇まいでもなく、他の草に覆いかぶさるようにして広がるつる性の植物なので、嫌われ者なのかもしれない。まあ嫌われ者というよりほとんど誰も関心を示さない植物と言った方が正しいかもしれない。 　写真は霜の降りた朝、矢作川を散策していて目に入ってきたもの。カナムグラを撮影しようと思っていたわけではなく、何か心に響くものがあったら撮影してみようと思っていただけのこと。面白いものでそんな気持ちでいると、必ず何か目に飛び込んでくる。しかも思いもかけない美しい情景であることが多い。これが目的を持たずに散策する醍醐味でもある。あるがままの自然をあるがままに見ていると、素晴らしい光景がいくらでもあることに気づかされる。カナムグラにはカナムグラでしか表現できない美しさがあることを知った。