霜は芸術家　写真　深谷利彦　Toshihiko　Fukaya

冬の時期、セイヨウタンポポを撮る場合、咲き出している花を撮る場合と綿毛を撮る場合がある。どちらも面白い被写体だが時としてその両方を一緒に撮れる場面にも遭遇する。理想的な姿で遭遇することは少ないが、花と綿毛が一緒にあればその両方を撮影したくなるのは当然のこと。今回、綿毛に霜が積もりその下には黄色い花が咲き出している場面に出会ったがその両方にピントを合わせるのが難しかった。もう少し花が手前にあるか綿毛が向こうにあればきっちりとピントを合わせられたがこの場面ではこれが限界だった。少し触れてどちらかを動かすという選択肢もあるが触れることによって霜の微妙なディティールが損なわれかねない。そんな訳で手を加えずに撮影した。野草の写真を撮る場合、時として周りの草や余計なものを整理して撮影することもあるが、基本的にはそのままで撮影することが多い。整理すると不自然な感じになってしまうことが多いからだ。ありのままの姿から美しさを見出すのが自然な行為だしそれが自然に対する礼儀でもあるような気がしている。